自然界の微生物や動植物は、いろいろな色素成分を持っています。
クロロフィルやカロチノイドのように、色素が植物体だけでなく地上のほとんど全ての生物にとって重要で不可欠な役割を果たしているものもあれば、アントシアニンやフラボノールなどのように色素の果たす直接的な役割がまだよく判っていないものもあります。
植物の世界には様々な色彩があり、遠い祖先が植物の色である色素をその生活の中に移しいれたのも自然の成りゆきということができ、植物染料や観葉植物の歴史が発生しています。
植物染料の歴史は、紀元前2000年頃で、インドで発見された あい(インジゴ)がエジプト、ギリシャ、ローマに伝播したことから中近東が発祥であったと想像できます。
わが国では、茜、藍染めなどがおこなわれていましたが、飛鳥時代に仏教伝来とともに中国の染色法が伝えられ、染色、彩りの技術も飛躍的な発展を遂げました。
安土桃山時代から元禄時代にかけて植物染料による染織文化が完成され、江戸時代を経て明治後半に至るまで連綿と繁栄をつづけ比類のない伝統美を作り上げてきました。
しかし明治の終わり頃より合成染料が導入された為、植物染料の歴史は幕をとじることとなりました。
西欧では1800年代中頃から自然科学の興隆によって、植物染料の本体である色素成分の分析解明が研究の主要な目標となり、色素成分の分離・精製法が発達し、天然色素の性状、構造、合成に研究の重点がおかれるようになりました。
植物色素の中でも特に安定しているフラボンおよびフラボノール類の研究から始まり、1900年の初頭より生理学的に重要な意義を持つ物質が注目され、アントシアニン、クロロフィル、カロチノイドなどの構造が解明され、現代の生化学的研究の基盤が確立されました。
今日の植物色素の多くの研究の源流は、古代の植物染料に端を発しているといえるでしょう。
一方観葉植物をとってみると植物の採集、栽培から育種や品種改良に関心が高まり、今世紀初めメンデルの遺伝学台頭から遺伝育種の研究によって色々な色の花が作り出され、その背景となる植物色素の生科学的遺伝についても近年大きく取り上げられてきています。
このほか、クロロフィルやカロチノイドの科学構造の解明に伴って、今日、光合成の仕組みを含めた光生物学という新分野も登場し、着実に成果を上げつつあります。
しかし、植物色素が植物学ないし生物学の分野で新しく注目されてきたのは、ようやく1930年代後半からのことといえます。 |